連載コラム 第1回
中小企業が直面する人手不足。「仕事はあるが、人が足りない」という悩みの本質はどこにあるのでしょうか。帝国データバンクの最新統計と現場の課題から、これからの職場づくりを考えます。
「仕事はあるが、人が足りない」という現実
「仕事はあるが、人手不足で受けきれない」
こうした声が、業種や規模を問わず多くの中小企業から聞かれます。人手不足は、もはや一部の業界に限られた課題ではなく、日本社会全体が直面する構造的な問題になっています。
統計が示す人手不足の実態
帝国データバンクの調査によれば、正社員が不足していると感じている企業の割合は51.7%に達しています。非正社員についても約3割の企業が不足感を抱えており、人材確保の難しさは広範な業種に共通する課題となっています。
とりわけ注目すべきは、正社員の不足感が非正社員を大きく上回っている点です。これは単に人が足りないという問題ではなく、企業の中核を担う人材が定着しにくくなっている現状を示していると考えられます。

(出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)」)
人手不足は一時的な現象ではない
また、人手不足の傾向はここ数年で突然生じたものではありません。2000年代後半から続く人手不足感は、コロナ禍において一時的に緩和したものの、その後は再び上昇に転じています。
人手不足は景気循環によって解消される問題ではなく、長期的・構造的な課題として向き合う必要があります。
人口動態がもたらす長期的影響
背景には、避けて通れない人口動態の変化があります。
2025年には、いわゆる「団塊の世代」の多くが75歳以上の後期高齢者となり、同時に「団塊ジュニア世代」も50代に入ります。労働力人口の減少は今後さらに加速し、企業が必要とする人材を十分に確保することは、これまで以上に難しくなっていくと予測されています。
DX・省人化だけでは解決しない課題
こうした状況の中、業務効率化やDX(デジタル化)による省人化、生産性向上の取り組みは、企業経営を左右する重要なテーマとなっています。実際に、セルフレジやモバイルオーダー、業務のデジタル化などを通じて、少ない人数でも業務を回す工夫を進める企業は増えています。
しかし、こうした取り組みだけで人手不足の問題が根本的に解決するわけではありません。
「人手不足倒産」が突きつける現実
現実の厳しさを象徴するのが、「人手不足倒産」の増加です。
2024年には、人手不足を主因とする倒産が287件と過去最多を更新しました。人が採れない、育たない、そして辞めてしまう。その結果、仕事があっても事業を継続できなくなる企業が現実に増えています。
問われているのは「人の数」だけなのか
人手不足は、単なる採用難ではありません。企業の存続そのものを左右する経営課題へと変化しているのです。
では、人手不足の本質は本当に「人の数」だけの問題なのでしょうか。現場を見ていると、そう単純ではないことに気づかされます。同じ条件でも、人が定着する職場と、そうでない職場が存在するからです。
「辞めない職場」を考える
賃金や労働時間といった条件面だけでは説明しきれない違いが、そこにはあります。
人が働き続けたいと思える職場とはどのような環境なのか。その問いに向き合うことが、これからの企業経営にとって、より重要になっていくように感じます。
次回予告
次回は、「なぜ人は辞めてしまうのか」「どうすれば辞めない職場をつくることができるのか」という問いを軸に、現場での実践や対話をもとに考えていきたいと思います。
人手不足の時代だからこそ、改めて「人と向き合う職場づくり」が問われています。